空港に着いて最初のミッションはoyster cardを入手することだった。
日本でいうところのSUICAのような便利カード。
いやはや、世の中はどんどん便利になって海外旅行でも助かることが多いなあ。
購入場所を探してみるが、券売機にはチャージ機能しかなく、本体を買えるわけではないらしい。
ということで特急券などを売っているインフォメーションで訊いてみることにする。
「オイスターカードが欲しいんですけど…」と言うと
にこやかな受付のおばさまが「それならここで買えるわ(にっこり)」とカードを2枚掲げてくれた。
「あ、それそれ!」ってな気分でチャージをしてもらってウヘウヘと笑いながらお礼を言う。
(デポジット料があるので、例えば20ポンド分、と頼むと「デポジット込み?デポジット別?」ときかれますぞ。)
ささやかだけど、最初のミッションがスムーズに行くとなんか「大丈夫」な気がしてホッとする。
エレベーターで地下鉄に移動しながらSGさんと2人でニンマリ。
このカードには旅の最初から最後まですっかりお世話になりました。
都心を走る2階建てバスに乗る時も使えるし、これを使うと運賃が安くなるのでオススメ。
それにしても、こういう類のカードってなんで海産物名なんだろ?
香港は「オクトパスカード」だったし。まあ、SUICAだって農産物的な名前だけども。
ちなみに今年はロンドン地下鉄150周年。
記念のオイスターカードも出ていたのをすっかり失念。
覚えてたら探したのになぁ。ザンネンムネン。まあ今でも扱ってたかどうかは謎だけど。
機内食というのはどういう(時間的)基準で出されているんだろう。
乗る時刻がちょうどご飯時だったりする場合、食べてから乗るべきかどうか悩むので
前情報としてどのくらいのところでご飯が出るってわかってるといいんだけれど。
さておき、機内食である。お米だと微妙な場合があるけれど、
そうじゃなければ「マ、マズい!」って叫ぶほどのものは出ないのでありがたい。
行きの飛行機で出た1食目、その時は全く気付かなかったけど
今見ると、超基本的なイギリス朝食メニューですな。
(マッシュルームの下にあるのはパン粉のかかったトマトなのだ。)
2回目のご飯ではケーキまでついてました。ちょっとびっくり。
別に甘すぎることもなく、割合美味しかった。
飛行機の中で『マン・オブ・スティール』を観る。
なんだかいつも寂しげな主人公の具合とか、地球の両親との関係とか
しみじみとするものがあって、じんわり感動しながら観ていたのだが、
後半、「僕は地球の人たちを守るのだ」という決意の元で
敵と大都会で戦いを繰り広げることにあぜんとする。
守りたいと言っていた「地球の人たち」がたくさんいるであろうビルは次々と破壊され、
逃げ惑う人々にはガラスやビルや、ありとあらゆるものが降ってくるが、そんなことにはおかまいなしだ。
飛行機(戦闘機だったかなあ)がビルに突っ込んでいくに至っては、
ああ、あの国は911を体験したのに平気でこの表現をしてしまうのだ、と呆然とするばかりだった。
そしてあの国はこの映画の主人公よろしく「世界の人たち」を守っているつもりなんだろうかと
思ったら、寒々しいことだなあ、とすっかりしらけてしまった。
掘り下げ方がもっと違ったら面白かったかもしれんのになあ。
エンターテインメントだと割り切るべきことなのかもしれないけれど
文化には国民性がにじみ出るのだと改めて実感したのであった。
後日、友人にその話をしたらああいう映画で主人公が「守る(あるいは救う)」人々というのは
「主人公の周りの」人々ってことで、その他一般人が死ぬことに無関心だったりすることは
割と多いらしい。そうか…。
夜明け前からホテルの送迎バスに乗って(私たちともう1組だけだった)
羽田空港国際線ターミナルへ。
あまり睡眠時間がなかったのでSGさんは腰を下ろすたびに寝ている。zzz…。
無事にチェックインなどをすましたらあとは暇でぼんやり。
飛行機は出発が20分ほど遅れるとアナウンスがあった。
窓の外では雨が降り出していて、それを眺めながら揺れたらイヤだなぁなどと思う。
けれど出発の頃には雨も上がり、一安心。
飛行時間は長いので時間をどう潰すかが悩みどころ(ちなみにSGさんはほぼ爆睡)。
映画を1本みて、少し寝て、英語会話集を見ながらぶつぶつ言って、
それから飛行機の軌道をことあるごとに眺める。あ、今1px分動いた、と思ったりする。
そんなことくらいしかした記憶がないのだが、気付けばロンドンだった。
色校正の日。問題なしでよかった。
あまりしないアプローチをしてみた(つもりな)ので完成が楽しみだ。
一昨日、M嬢に「床が抜けるから!」と突っ込まれたばかりだというのに
今日も今日とて本を3冊購入。中毒は重症状態継続中。
帰宅後に今読み途中の本を広げながら、はたと気付く。
文字を読みたい、活字を流し込んでいたいというような中毒的症状は
その言葉通りの行為を欲望しているものと気にもせずにいたけれど、
実は文字の誘発する想像力の生成能力を確かめて安心したいのだな、ということを。
そうかそうか、ふーん。
仕事の打ち合わせで久しぶりにまっとうな外出をする。
素敵な反応をいただき、嬉しくなる。
◎
1週間ほど、ほとんど家にこもりほとんど口をきいていないと
身体の輪郭が空気に溶け出してしまってゆらゆらとどうにもはっきりしない。
このままだともっととろけてしまいそうだったので歩くことにする。
こういうことは意外と本能的に判断するものだなぁ。
途中、はがれて落ちた警備会社のステッカーを見かけたり(しょんぼりと頼りない)、
「立」「ち」「小」「便」とだけ書かれた壁を眺めたり(もはやなんだかいさぎよい)、
ホームセンターに全能性を感じてみたりしながら駅から駅まで1時間ほど歩く。
そうしていたら少しずつ輪郭が締まってきたのでああ、ヨカッタと安心する。
夕飯を食べようとA嬢を待っていたらタイミングよくM嬢からもお誘いがあったので
3人でお店開拓。料理が出てくるのはゆっくりだったけどおいしかったな。
やっぱりご飯は誰かと食べるのがおいしいし、人と話すのはいい刺激だ。
ここしばらく風邪(自己判断)をひきっぱなし。
基本的に怪我はするが病気はしない質なので、珍しい。
何が原因だったかいまいちわからない。
(私に「寒暖差が…」とか「寒かったから…」とかいう言葉は基本的に当てはまらない)
更に珍しく数日は微熱続きだったので仕事の予定が狂ってしまった。とほほ。
メールなどにも返信するエネルギーがないので、急を要するもの以外はほったらかし。
いまだに完治しない鼻のおかげで1週間でティッシュを3箱も消費し(ただいま4箱目)、
それが鼻セ◯ブではないので、摩擦係数について思いを馳せたりしている。
その上、買い出し以外に外に出ていないので人と話していない。
ここ一週間で(仕事の電話を除けば)会話した人はコンビニやスーパーの店員さんくらいだ。
(「はい」とか「いりません」とかくらいだし…)うーむ、精神的に不健康だな。
なにはともあれ、健康第一。
まだぼんやりした体調で、仕事の素材を入手するため原宿へ行く。
地図に示されたルートを通ると竹下通りを通ることになる。
普段だったら回避した気がするけれど考えるのも面倒でそちらに足を向ける。
……んじゃなかったーー!!なんだこの人混み! うう…ひたすら心を無にしながら耐える。
ようやくそこから抜け出して目当てのお店へ。
小さなお店だけれど品揃えは抜群だったし、
お店の方もとても親切に相談にのってくれてすごくありがたかった。
レースとひと言でいっても、様々な種類があって可愛らしいものや色気のあるもの、
いつまで見ていても飽きない気がした。こういう素材をみるとなにかを作りたくなってくるなあ。
ともあれ、レースを探している人にはぜひオススメであります。
▽
THE LACE CENTER harajuku
東京都渋谷区神宮前3-27-7 / 03-6406-0740
11:00-19:00(水曜定休)
ずっと水平だったものを垂直にすることがこんなにも心許ないとはね、
と思いながら、夜のスーパーに出かける。
外がそんなに寒くないのは、別に自分が内からカッカしているせいではないだろう。
重力の存在を感じつつもふわふわした身体を
さっき買ったペットボトルや冷凍食品やお寿司や果物が
自身の得ている重力で私を地面に安定させてくれていた。
その具合に、足のついた風船を思い出しながら心の中でふはは、と笑って帰る。
以前装丁をさせていただいた
徐阿貴さんの『在日朝鮮人女性による「下位の対抗的な公共圏」の形成』(御茶の水書房 刊)が
第32回山川菊栄記念婦人問題研究奨励金(通称:山川菊栄賞)を受賞されました!
編集者の方からその朗報を伺い、携わった者のひとりとしてとても嬉しくなりました。
私は不勉強でその賞については知らなかったのですが、
(出版または発表され活字化された)女性(問題)に関する研究論文・調査などに贈られるものだそうです。
賞にその名を冠する山川菊栄さんは明治から昭和を生きた評論家・婦人問題研究家で、
階級支配と性支配の差別の重層性に切り込むなど、今日の課題に通ずる先駆性を持った方なのだとか。
徐さんの著作は在日朝鮮人女性(特に一世あるいは学齢期が戦前にあたっていた二世の方)を
主な担い手とする「太平寺夜間中学独立運動」と呼ばれる教育行政への異議申し立て運動を中心としたものです。
選考者評にも「タイトルの難しさ」があがるように、一見とっつきにくい感じではありますが、
ホームページ(http://www.yamakawakikue.com/)の「選考経過」「推薦の言葉」を一読すると
選考者の方がハルモニたちの “ライフストーリー” にぐいぐいとひきこまれていった様子が見てとれます。
研究書ということもあり、お手頃とは言えないお値段ではありますが……(汗)、
興味のある方はぜひぜひ! 図書館で借りるって手もありますし!