明日は初めての登山である。
基本的なものは既に揃えてあるよな、と確かめていたらザックカバーがなくて「!」となる。
あわてて吉祥寺のスポーツ用品店へ。
容量だけをメモして出向いたのだが、お店の人によるとザックの容量が同じでもサイズはメーカーによって
バラバラでその情報だけでは不十分なのだそう。できれば実際装着してみて決めるべきらしい。
とはいえ、明日には必要なのでアドバイスをもとに選んで決める(結果的にはそれで問題なかったのでありがたかった)。
その他、携行食やら虫除けやら登る周辺の地図やらとあれこれと買いそろえる。
小さい頃のキャンプを除けば、山登りをしたことがないので「これもいるかな?」と不安に思うことも多々ある。
が、結局は一度登ってみないとわからんよな、ということで必要最小限と思えるものだけにした。
それにしても登山って初期費用がかかるレジャーだ。
家に帰って準備をしているとどんどんワクワクしてくる。
同行者とメールしたり電話したりしながら準備を済ませて、ひとまず就寝。
先述の展示に行く前に昼食を食べるところを探してさまよう。
銀座には飲食店がたくさんあるけれど、いざとなるとどこに入ったものか…となってしまう。
もういい加減、どこでもいいから空腹を満たしたいと投げやりな気分になってくると
普段ならあまり入ろうと思わない場所にあるお店に「入ってみるか」ということになる。今回もそのクチだった。
そしてそんな時はなんだか冒険のように急にワクワクしてきて、自分だけが特別な場所を見つけたような気にさえなる。
細い路地の中間辺りに半分くらいみえているのがお店の看板。
銀座にもこんな階段があるのだった。
細い路地と暗い階段を登っておそるおそる入口を開けてみるときちんと整えられた、こぢんまりした空間があった。
これはなんだかいいぞ、とその瞬間思う。まるで『孤独のグルメ』の世界である。
お店の方も静かに空気に馴染んでいて、こちらが緊張するような雰囲気が一切なくてありがたい。
注文した海老フライは、細かいパン粉でさっぱりとまるで脂っこくなく、
ぎゅっと身の詰まった「まさに」海老フライだった。うーむ、大正解。
そして、夕飯は気まぐれに西荻窪で下車して目についたお店に。
この空間に3階が!?と驚くお店だったけれどそれがかえって落ち着く雰囲気で意外と心地よい。
しかも注文したご飯がとてもおいしかった(鶏のココナッツ炒めご飯…とかそんな感じのもの)。
今日のご飯は大当たりであった。
頭上にゾウが光っていた。
今日はap(=大垣彩)嬢の個展を観に行った。
しっとりとした落ち着く雰囲気のギャラリーに大型の作品が4点、ドローイングなどが多数展示されている。
まだ枠につける前の絵は見せてもらっていたのだが、あらためて展示されているのを観ると
「いいじゃーん!」と思う。特に本人が最後まで出品するかどうかを悩んでいた様子の作品が個人的には好きだった。
なんというか…ひんやりとした雰囲気を持っていて気持ちがいい。
抽象絵画は観る方も難しい、ってところが確かにあると思うけれど、
その一方で直感で「いいな」と思える親しみやすさも確かに存在すると思う。
何でそれをいいと思ったかについて明言するのには訓練が必要だが、それはそれでまた別の問題。
彼女の大型作品は(そのサイズを除いては)家の壁にかけてあっても
不必要に自分の存在を主張をしないだろうなと思える、静かな呼吸をしていた。
ともかく、普段よくつるんでいる友人の思いがけない一端を観て、
驚くというか(すごくいい意味で)裏切られたというか。
こういう感覚ってこちらの制作意欲も刺激する材料になる。
考えてみると私はそういう驚きをもたらせることを最近全然していないのだ。いかん。
刺激を貰うばかりではなくて、与えられるようでなくてはなぁなどと自省する。
最近そんなことばっかりだなあ。
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◎本日の読了
『隣のアボリジニ-小さな町に暮らす先住民』上橋菜穂子 ちくま文庫
▷私たちは勝手なセンチメンタリズムで他者の生き方に願望を持ってはいけないのだと気付かされる著作。
それにしても、この人の語り口はやっぱり好きだ。
物語であってもそうでなくても想いに嫌みがなく、水のようにしみ込んでくる。
先日お知らせしたタッキーの展示を観てきた。
あいにく本人がちょうど不在の時に行ってしまって会えなかったけれど作品を堪能。
「夢」という彼女が大事にしているモチーフをもとにした軽やかに幻想的な作品と、
思わずズキュンとくるようなユーモアのある作品。その二面性ににんまりとしてしまう。
特に個人的にはユーモアのある作品『I…』というのがかなりツボであった。
あの細かさと展示方法とモチーフの選び方と、すごくよかったなあ。マクロとミクロの視点で妄想して楽しみました。
(どんな作品か気になる方はぜひ実物を見に!)
他の方の作品も個性的でバラエティに富み、
同じことを学んでもこれだけの多様性がうまれるのだというとてもいい例示であった。
金属でこんな表現が出来るのか、とかこれが売っていたら欲しいな、とか
これはどうやって作ったんだろう、とか…知らない世界な分、あれこれと興味深く鑑賞。
学生時代からなんだかんだ言って「モノ」の力には敵わないよなあと思っていたけれど
それをまた思い出す。特に生活に密接な「モノ」たちをつくり出せる手はとても魅力的だ。
そういえば、先日出かけた際にこんなものを見つけた。リアル鮎。串まで刺さってる。
和菓子では確かに今の季節、鮎をかたどったものが出回るがそれにしてもこれ…リアルに寄りすぎな気が…。
でもその具合に感動して購入。あんこで出来ているとは思えない(運搬時に口元がぺちゃんこになったのが悔やまれる…)。
例えば、リアルがリアルに思い切り寄り添ってしまうと、それはリアルとすら認識することは難しくなるけれど
この鮎くらいのリアルさは、寄り添いきれないつたなさがとても愛しく、見ていて嬉しくなる。
もちろん、ちゃんと美味しい和菓子でありました。
大学助手時代の担当学生だったタッキーが出品する展示が今日から始まりました。
彼女は大学卒業後、ヒコ・みづのジュエリーカレッジで学んでいます。
同期だったみっちゃんが作品の撮影をしているものの、
そのスケジュールが押せ押せだったと聞いたけれど、間に合ったかな…。どきどき。
『METAL CRAFT EXHIBITION』
ヒコ・みづのジュエリーカレッジメタルクラフトコース3年生25名によるグループ展
Gallery5610(青山)
2011.07.05(火)〜09(土)
11:00-18:00(最終日は16:00まで)
http://www.deska.jp/
このギャラリー、河野鷹思によって開設されたのですね。初めて知った!
河野氏は私の大好きなデザイナー。
彼の「淡交」のポスターを見た時、身体が震えたのをいまだに覚えております。
友人のap嬢こと、大垣彩さんの個展が今日から始まりました。
『なんとなくとおくまで』大垣彩 個展
exhibit LIVE&MORIS gallery(銀座)
2011.07.04(月)〜16(土)但し日曜休廊
12:00-19:00(最終日17:30まで)
http://liveandmoris.blogspot.com/
作家本人は火曜日と最終日以外、在廊とのこと。
銀座、あるいは新橋へお越しの際はぜひお立ち寄りを。
ポスター等のデザインを担当させていただいた『放浪の天才画家 山下清』展を観に千葉県立美術館へ。
担当の方が、午後は作品の前が2重3重の列になるとおっしゃっていたのだが、行ってみるとまさにその様相!
あらためて山下清という人の知名度と注目度を知ることとなった。
カタログでは多くの作品を何度も観ていたものの、実物ををまとめて観るのは初めてだったのだが、
その緻密さは驚異的だった。年を経るごとに細かさが増し、貼り絵というイメージからは想像できないほど
立体的なのだ。貼り絵って作る人が作れば「立体作品」なのだな。
かといってただ貼り重ねているわけではなく、背景色の中にぴったりとはめ込まれた植物や人物なども見え、
隙間のなさもこれまた驚異的。
ただ、個人的にじっくり観たのは東海道五十三次の作品だった。
フェルトペンで描かれた線描を版画に起こしたものだが、人々には素朴な愛らしさが、
建築物には確かな観察力が感じられて、作者本人が「ふつうの絵」という1枚ですらストーリー性を持っていた。
山下清という作家は、実物を見なくてはいけない作家であった。
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◎本日の読了
『自分をいかして生きる』西村佳哲 ちくま文庫
『RDG はじめてのお使い』荻原規子 角川文庫
担当している授業の最終日。学生の作品が出揃い、教室の机は華やかになった。
毎回ここでは個人的な発見があるのだが、今回も例にもれず面白いものをみたので
これを元にいろいろと試してみて、来年の授業に役立たせなくてはいけない。
・ヴィヴェールにも問題なく刷れること
・乾燥ぎりぎりでの印刷は面白いテクスチャを生むこと
・極めてゆるく溶いたインキは単色でもグラデーションを作るかもしれないこと…など。
紙、インキにおいての工夫は無限と言えるほどあって、出来ればそれをたくさん試した結果を
学生に伝えられたらいいと思った。来年までの課題。
それにしても貴重ポスターの閲覧では、メンバーによってずいぶん反応が違う。
今回の学生達はほとんどだまーって観ていた。それらの作品のすごさが伝わったかどうか
ちょっと心配だが、そのアプローチについてもこちらでもっと工夫しなくてはいけないのだろう。
夜はC嬢と語らいの時間。とても久しぶりにゆっくり話すことが出来てよかった。
私なら絶対に入らないバーに連れて行ってもらって、カクテルっておいしいものもあるのだと知った。
甘いんだか苦いんだかわからん!というのは嫌いだが、そういう類いでないものもあるのだな。
夜はH氏と仕事の打ち合わせ。
国立のロージナ茶房でタコスライスを食べながらあれこれと構想のやりとり。
なにごともせっかく作るなら面白い方がいい。
それも現状からどうすれば良くなるかがイメージできているのだからなおさら。
「これまでそうだったから」などという理由で現状を維持することには
常に懐疑的でいたいと思う。
そういうことを一緒に考えられる人と仕事をするのはとても楽しい。
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◎本日の読了
『団地ともお』18 小田扉 小学館
『少年ノート』1 鎌谷悠希 講談社