S本さんの “作業” には、とても平らかな安心感を感じる。
これはなんだろうなあ、と思う。
随分と見慣れてきたということもあるに違いないのだけど、それは大きな要因じゃない。
きっと “意味のないことを意味のないように” というその作業を、S本さんがまさに「そのように」行なうからだ。
人間は自分に、そして自分の行為に意味を持たなければいられないから
なにかを「意味のないように」行為することは言うほど簡単じゃないはずなのに、
S本さんは「そう」していて、見ている私にもはっきりと「そう」感じられるからだ。
ひとがしている行為を見ていることが、まるで座禅でもしているかのような平らかさを心にもたらすなんて
なんだかものすごい(座禅したことないけど(!)、でもそんなふうなのだ)。
空間にものをおく行為の感触をひしひしと感じながら、すっかり安心してしまうなんてことが
この世の中にあるなんて知らなかったなあ。
時おり、坂田和實さんのレイアウトのようだなあ、などと思ったりしている辺り、
まだまだ修行が足りませぬが。
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そして、S貝さんのメロディは力強いサックスの音なのに、なんだか
地平線までいっぱいに草の揺れる丘でほろほろと涙を流す女の子を見ているよう。
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Y子さんの作るご飯はどれもこれも美味しい。なぜだ。
サンドイッチはパンまで自家製。おいなりさんは中身が五目ちらしという贅沢。
歩いていたら横断してきたミドリキラリ虫。すわ、と携帯でおいかけてなんとか撮影。
名前はわからないけど、ゴミムシとかそんなかなーと思って調べたら
「アオオサムシ」というらしい。ほほー。
ムシたちはいつも良く出来ている。
3ヶ月ぶりの山。
今回は参加メンバーが割と多く7人パーティーだった。
▷登山道に入るまでの道のりには収穫間際のお米。日の光を浴びて本当に金色だ。
ただそれだけでとてもきれい。
久しぶりっていうだけでちょっとドキドキしていたのだけれど、
思ったよりも急登があったりしてぜーぜーいいながら登る。
平地ではまだ夏も引きずりつつの秋だけれど、山の中は空気が随分と秋の匂いで
紅葉するにははやいものの、なんだか心地よい季節の変わり目を感じる。
そこにあるものたちがちゃーんと季節をめぐらせているのだ。
▷山頂にて。真っ正面に富士山が見える(写真的には右手奥)。
ちょうどこの時は雲をかぶっていたけれど、
それでも周囲も含めて山並みは思わず声の出るような気持ちよさだった。
そして。
昨日雨が降ったせいもあるのか……それとも秋だからなのか……
き、きのこが! これでもかってくらいあちこちに生えている。
どれがなにかもわからないけれど、見たこともないような大きなものから、
まるでジオラマのような世界まで。いやあ、おもしろい。
秋って、本当にきのこの季節なんだなあ。
▷すごくクローズアップして見てみたいきのこだ。よくみると点々は立体的だし。
個人的にギリギリセーフ…かな、という点々具合。まるで超有名なあの方の作品のようでもある。
▷ジオラマ感のいちじるしい風景。きのこと苔の関係がほほえましくて、
きのこ団地、って感じだ。この風景はとても好きだったなあ。
▷まるで珊瑚のようなもの。多分きのこの一種だと思う。…多分。
ふと見回すとどっさり生えていて、みんなで「ひえー」といいながら脇を通過。
ガラス細工だか蝋細工だかのようでもあって、作品って言われたら納得してしまいそう。
▷ふかふかのカステラみたいなきのこ。
中がたまご色で美味しそうだけど、多分食べちゃいけないんだと思う。
▷大きい!!本当に大きいのだ。後ろに生えている杉との関係でわかるかなあ。
山での存在感がハンパない。これ、なんだろうなあ。
毎度、山に登るたびに「なんで山に登ってるんだろう…」と思いながらぜーぜーと
苦しんでいるのだけれど、山頂についてしまうと、登りの辛さはコロリと忘れてしまう。
それは山頂の景色の素晴らしさで苦しさが帳消しになってしまう、とかそういうのじゃない。
(いや、山頂は気持ちはいいけれども。)
下りも足をギシギシさせながら下るのに、ふもとについてしまうとその時の辛さは
やっぱりすこーんと忘れてしまうし。
(私が行くくらいの)登山の大変さは、本当に「その瞬間瞬間」だけの苦しさで、
あとに引きずるような種類のものじゃないのだろう。
……ま、筋肉痛は引きずりますけどね。
だからこそ、また行こうと思ってしまうのだろう。
(この「また行こう」の感覚も山は独特なのだ…っていっても伝わらなさそうだけども…。)
苦しさの種類っていろいろあるものだ、となんだか不思議な気分がする。
『博物図譜とデジタルアーカイブ』関連で美篶堂さんの伊那製本所に見学に行く機会を得た。
学生時代から憧れだったけれど、工房を拝見するのは初めてだ。
総勢5名で高速バスで4時間ほど揺られ(その間、寝不足だった私は爆睡)、
伊那市でタクシーに乗り変えて15分ほど。
アルプスに囲まれて空が広く、稲穂が青々と揺れるその景色はとても胸のすくようで
思わず深呼吸。でもタクシーの運転手さん曰く、今日はアルプスがあんまり見えていないらしい。
それでも随分きれいだ。
ちなみに工房の周囲には「みすず」「美篶」という表記がたくさんあって、
この地域のことをさすのだ、と初めて知った。
後輩で製本家のM嬢に出迎えられ、工房長や親方にご挨拶をしてから早速見学させていただく。
今回、I期からV期までの『博物図譜とデジタルアーカイブ』カタログを合本するために
お力添えいただいているのだが、5冊分のカタログのページ(これは綴じられていないもの)が
一堂に会すとなんともはや……圧巻!!
こんなにたくさんか〜〜、となんだか面白くなってしまった。
この圧倒的な紙の束を手作業で折り、丁合し、かがっていただくのだ。
……なんというゼイタクだろうなあ…うっとり。
ちなみに私たちがお邪魔したのは、親方がページを折り
(何枚もを一気にズレなく折ることができるのは親方だけらしい。見ていても
ほれぼれするような鮮やかさで悩殺されてしまった。)、
スタッフの方が折丁を整え、それをさらに丁合するというタイミングだった。
果てしない作業を思い、我々見学者一同は「は〜」とか「ほ〜」とかいうばかりだ。
▷親方が折ったページの束。この枚数をズレなしに折るって……(愕然)!
ちなみにスタッフの方ももちろん複数枚を折ることはできる。ただ親方は枚数が違うのだとか。
▷丁合を待つ折丁たち(ごく一部)。これをスタッフの方が手作業でまとめていくのです。平伏。
『博物図譜…』以外にも、別のお仕事を見学させていただいたり、
工房内にある機械を見せていただいたり。親方には「小僧仲間」と言えるご友人が
たくさんいて、そのつながりでオリジナルの機械を作ってもらったり、
なんてことがあったらしい。なんてことないように語るその様子がうらやましくて、
そういう人間関係は幸福だなあ、と思う。
もちろん私にも贅沢な友人はたくさんいるのだけれど…厚みが違うというかなんというか。
……って、当たり前なのでしょうが…。
▷あまり見たことのないタイプのプレス機。これで一度背を落ち着かせる。
見れば見るほどよく出来ていて、私もT先生もひゃーひゃーと興奮しきり。
別件のお仕事を手がけているスタッフの方の手際の良さにほれぼれしたり、
親方がここ数年手がけていらっしゃるお仕事を拝見して悶絶したり(詳しくは話せないけれど……
あれは神業以外のなにものでもない……眼福。)、
過去の作品を解説付きで見せていただいたり。心充ち満ちる贅沢な贅沢な時間でありました。
今年はおなかばっかりだ、と言っていたら早速顔を見せてくれました。
カメラを持っていなかったので、携帯をずいぶん近づけて撮影をしたのだけれど、
じーっとしていてくれて嬉しかったなあ。
フラッシュにも動じないでいてくれました。悪意がないこと、伝わったかしらん、と
勝手にほくほくするのでした。
この時期、よくヤモリに出会う。
今日は珍しく(というか初めてかも)2匹も!
しかし今年はおなかばっかりで目を合わせてくれないなぁ。ザンネン。
先日、友人の角裕美さんと会って展示のお知らせをいただきました!
このメンバーでこの場所(といってもどんなところか話を聞いただけなんだけれど)、って
すっごく楽しそうだなあ!と今からワクワクしています。
都心なので、なにかのついでに…でもぜひお立ち寄りくださいませ。
グッズのひとつである手ぬぐいを見せてもらったけれど、とてもかわいくてステキだったなあ〜。
買いに行こうっと!!
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8月15日(金)〜27日(水)
新宿マルイ アネックス 3階 FEWMANYにて
グッズ販売を中心とした展示をします!
大嶋奈都子 http://natsuko-oshima.com/
河原奈苗 http://www.barbaratics.com/
角裕美 http://kadohiromi.com/
のなかよし3人展です。
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楽しいお出かけの日。
行った先で、偶然ジンガサハムシを見つけた。
日本で見るのは初めてで、「わあ!」と大興奮。
崖上の住宅街のガードレール脇で必死にカメラを向けて、
完全に怪しい人である。人通りがなくてよかった…。
太陽光に当たるときらりと金色に光る様子はとてもかわいらしくてキレイ。
なんて名前かなあ、と帰ってから調べてみたら
海野和男先生のHPで答えを発見。偶然ながら行き当たった時は「お〜!」と嬉しくなってしまったなあ。
彼(彼女かも)は「セモンジンガサハムシ」というそうだ。
一緒にいると楽しくてたまらない2人と一緒に『キトラ古墳壁画』展を観に行く。
朝から大雨。そして朝なのに上野はすごい人。
平日なのにみんななぜここに…と自分のことを棚にあげて不思議に思う。
まあ、おじいちゃんおばあちゃんたちはいてもおかしくないけれど。
開館から1時間30分ほどだったが、既に館内に入るのに90分待ち(多分実際はもっと待ったと思う)。
普通だったら絶対にこんな行列に並んだりしないけれど、
2人と一緒だったらそれだけで楽しかろう、とどこか浮かれた気分で末尾へ。
今後見ることもなさそうなリンボーダンスを見たり、
今考えていることや、いつも不思議に思うことを話してみたり、
視線をお互いの背の高さに合わせて新鮮に思ったり。
お腹は減ったし足も疲れはしたけれど、こういうなにするでもない時間に
つらつらと話すのはとても楽しい。
◎
さておき、ようやく入館して展示会場へ。展示そのものはこじんまりした雰囲気で、
人の隙間をぬっては壁画の精巧な複製を見たり、発掘された副葬品を眺めたり。
壁画そのものを守るためにひんやりした会場内でしゅくしゅくと(?)
キトラ古墳の壁画との対面に向かう。思ったよりもずっと小さな画は今も鮮やかで、
それを見ながらずーっと昔の画工に思いを馳せる。
なんだか「観た」という事実そのもので満足してしまうものって
ある気がするし、この壁画たちもそうなりやすいものだと思うのだけれど、
遠い遠いひとの営みを思うことが出来たので、「観た」だけで終わらなくてよかった。
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気付けばもういい時間なので
昼食を食べ、少し移動してKITTEのインターメディアテクを楽しみ、
最後はとても美人さんなケーキを食べてほくほくする。
いい1日なのであった。