14.08.19 手製本

『博物図譜とデジタルアーカイブ』関連で美篶堂さんの伊那製本所に見学に行く機会を得た。
学生時代から憧れだったけれど、工房を拝見するのは初めてだ。
総勢5名で高速バスで4時間ほど揺られ(その間、寝不足だった私は爆睡)、
伊那市でタクシーに乗り変えて15分ほど。
アルプスに囲まれて空が広く、稲穂が青々と揺れるその景色はとても胸のすくようで
思わず深呼吸。でもタクシーの運転手さん曰く、今日はアルプスがあんまり見えていないらしい。
それでも随分きれいだ。
ちなみに工房の周囲には「みすず」「美篶」という表記がたくさんあって、
この地域のことをさすのだ、と初めて知った。

後輩で製本家のM嬢に出迎えられ、工房長や親方にご挨拶をしてから早速見学させていただく。
今回、I期からV期までの『博物図譜とデジタルアーカイブ』カタログを合本するために
お力添えいただいているのだが、5冊分のカタログのページ(これは綴じられていないもの)が
一堂に会すとなんともはや……圧巻!!
こんなにたくさんか〜〜、となんだか面白くなってしまった。

この圧倒的な紙の束を手作業で折り、丁合し、かがっていただくのだ。
……なんというゼイタクだろうなあ…うっとり。
ちなみに私たちがお邪魔したのは、親方がページを折り
(何枚もを一気にズレなく折ることができるのは親方だけらしい。見ていても
 ほれぼれするような鮮やかさで悩殺されてしまった。)、
スタッフの方が折丁を整え、それをさらに丁合するというタイミングだった。
果てしない作業を思い、我々見学者一同は「は〜」とか「ほ〜」とかいうばかりだ。


▷親方が折ったページの束。この枚数をズレなしに折るって……(愕然)!
 ちなみにスタッフの方ももちろん複数枚を折ることはできる。ただ親方は枚数が違うのだとか。


▷丁合を待つ折丁たち(ごく一部)。これをスタッフの方が手作業でまとめていくのです。平伏。

『博物図譜…』以外にも、別のお仕事を見学させていただいたり、
工房内にある機械を見せていただいたり。親方には「小僧仲間」と言えるご友人が
たくさんいて、そのつながりでオリジナルの機械を作ってもらったり、
なんてことがあったらしい。なんてことないように語るその様子がうらやましくて、
そういう人間関係は幸福だなあ、と思う。
もちろん私にも贅沢な友人はたくさんいるのだけれど…厚みが違うというかなんというか。
……って、当たり前なのでしょうが…。


▷あまり見たことのないタイプのプレス機。これで一度背を落ち着かせる。
 見れば見るほどよく出来ていて、私もT先生もひゃーひゃーと興奮しきり。

別件のお仕事を手がけているスタッフの方の手際の良さにほれぼれしたり、
親方がここ数年手がけていらっしゃるお仕事を拝見して悶絶したり(詳しくは話せないけれど……
あれは神業以外のなにものでもない……眼福。)、
過去の作品を解説付きで見せていただいたり。心充ち満ちる贅沢な贅沢な時間でありました。