14.01.20 大型宇宙船がトロンボーン形でも驚かない

CDのジャケットをデザインさせていただくことになり、音源の録音にお邪魔する。

演奏はトロンボーン奏者の古池寿浩さん
少し前に知り合った方なのですが、ソロ演奏を聴くのはこれが初めて。
ちなみに資料としていただいた楽曲を聴いた時の第一印象は「…私、お腹鳴ったか?(←真剣)」だった。
つまりメロディアスな作品ではなく、音、の作品。
音楽に積極的に馴染みのない私は、それを面白がりながらも
録音で、うっかりウトウトしたりしやしないかしらん…と少々心配でもあった。

いつも仲間が集う場所に、プロデューサー&録音担当&デザイン担当&演奏者が集まり、
周囲の音を出来るだけなくした状態で録音がスタート。
私にとっては初めて見るマイクとマイクスタンド、近くでみるトロンボーンと不思議な道具、
もの珍しくて「おほほー」とニヤニヤしてしまう。

演奏は全て即興で、「じゃ、やりますか」ってな具合で始まる。
私は勝手がわからないのでひとまず、録音の邪魔にならないように身動きしないことにする。じーっ。

…そして、そこに響いた音を聴いて、私の心配はすっかり吹き飛んだのであった。
知らないもの(=トロンボーン)から、知っているありとあらゆる音がする。
いつかみた景色の、日々の生活の、自分の身体の、そして周囲の生きとし生けるすべての、つまりは

この世界の。音がした。

ひとつの楽器から、こんなにたくさんの音が出てくるなんて知りもしなかったから
すっかりワクワクしてしまって、ウトウトするヒマなんて全然なかった。
それに、その《世界の音》はとても視覚的で、窓のない地下スペースにいるのに
目の前は随分と広大な荒野だったり、破裂するしゃぼん玉だったり、
懐かしい気配のする農村だったり、夕暮れを行くオートバイだったりするのだ。
音がつくる弾力のある薄白い膜をグッと越えた先にそれらの景色があるようで、
まるでどこでもドア(どこでもガスの方が近いかも)みたいだった。

わー、なんだこりゃ!!おもしろいーー!!と無音で興奮。ふがふが。
すっかり鼻息が荒い心持ちだ。

こんなにあらゆる音がするんだったら、
SFに出てくる人類を載せた大型宇宙船(映画とかよりマンガの方がしっくり来る)が
トロンボーンの形をしていても納得しちゃうなあと勝手なことを思ったりする。

この世はメロディなんて奏でていないけれど、
私たちはその音に飽かず耳を傾けていられるんだった、ということに改めて気付いたりもして。

音の水分だとか、宇宙とトロンボーンだとか、振動する地球だとか
裏返る内臓だとか、その他にもたくさん断片的にあれこれ思ったけれど
あまりに断片的で散漫になるのでひとまず。

いいジャケット作るぞー!と改めてやる気がもりもりしてきたのでありました。

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◎本日のお言葉
『ブリブリし続けてもう10年』