11.04.04 志村坂上

東京に住んで10年以上になるが、行ったことはもちろん、聞いたことのない駅や地域は多い。
自分が知らない間にもそこをホームとして生きている人がいる、ということが私にはドキドキする。
別に世界は自分中心に回っていると言いたいんじゃなくて、世界は広くて面白いと叫びたい。
私は「私」のことしか知らないけれど、「私」じゃないたくさんの人がその人の「私」で
日々生活をしているんだなあ、と思うのだ。

さておき、今日も初めての地、都営三田線にある「志村坂上」に装丁した本の印刷立ち会いに行く。
この辺りは印刷・製本の工場が多いようで一角には凸版印刷の大きな建物が見える。

今回装丁した本のカバーはオペーク白で紙は黄土色のため、紙色を完全に遮蔽できるとは
思っていなかった。それは装丁範囲内。印刷担当の方はぎりぎりまで盛ってくれたので、
「ではそれで」と1度は答える。他の色の刷りは数時間後だというので、池袋のジュンク堂へ向かう。
だがその間に「2度刷りしたらどうかな…」という考えがもたげてきて、工場にTEL。
ただでさえスケジュールがタイトな上に予算の問題もあるとのことだったのだが、
出版社の社長さんに相談してみたところ「納得のいくようにやりなさい」とのお言葉。
「無理だな」と言われなかったことに背中を押され、再度交渉。
工場の方としてはやはり迷惑なことだったと思うが、結局白を2度刷りしていただけることとなった。
感謝あるのみ。

その後、指定の時間にもう一度工場へ。担当の方から他の3色を刷ってみたところ、
白が乾ききっておらず印刷機のブランケットにインキがとられてしまう(=せっかく刷った白が
薄くなってしまう)ので、明日改めて刷ることにするというお話がある。
こちらがわがままを言っているにも関わらず「それでも駄目なら…白の3度目だな」と提案いただき
その職人魂に頭が下がる思い。本当にありがたい。

今日刷ったものをいただいて、少し印刷担当の方とあれこれお話しして(これも楽しかった!)
工場をあとにする。もっともっと印刷のことやインキのこと、紙のこと、知らなくては、と
思いを新たにする。そのためには現場の方といろいろお話しできるのが一番だ。
もっとそういう機会を積極的に作りたいと思う。

ともあれ、自分の作ったものが具体的な形になっていくのはいつ見ても興奮するなあ。
店頭に本が並ぶ日も近い。

1)工場の近くで昼食。特製スパゲッティである。ピザ味のスパゲッティ。

2)ここが、それを食べた喫茶店。地元に根ざしている感じ。