14.04.13

今日も朝から府中市美術館へ。
昨日の作業の続きを、とF嬢は大型本の製本を、
私は別のイベント用に作る本のダミーづくり。

入口のガラス戸のところには「現在準備中」の旨と予告が書かれているのだけれど、
ふと戸が開く音がした。
顔を上げると、小さな女の子が立っていて「なにしてるの?」。
「本をね、作ってるんだよ」と答えると
「え?なに?」
「本、ほら、こういうやつ」と作りかけのものを見せてみる。

「なんで作ってるの?」
「これなに?」
「なんで?」
「これ、どうするの?」

と彼女の好奇心が小さな身体からはみ出して
どんどんと溢れているのが目に見えるようだった。

私たちの作っているものは彼女にとっては
意味のあるものではなかったかもしれないし(でもS嬢の手元はじーっと見ていた)、
私たちの使っている道具は見慣れないものも多かったみたいだけれど、
すぐそばに来て、ボンドに指を入れてちょっと驚いてみたり、
それを金尺につけてカッターマットになすりつけてみたり、
三角定規の使い方を聞いてみて、「じゃあ、こうやっても使う?」と試してみたり、
床に置いてあった古びた包み紙がなんでぐしゃぐしゃなのかが気になったり。

部屋中を飛び回って、ティンカーベルの粉のように「?」を振りまいていた。
ああ、彼女はこのたくさんの「?」で世界を少しずつ大きく広く深くしていくんだなあ、と
とても新鮮だった。あんなに “なにかの固まり” であるものを見ることってないものだ。

極めつけは「ねえ、化石ってどこにある?」だった。
え、化石?それはいわゆる化石でいいのかしら…と思いつつ、
「うーん、どこにあるだろう。掘りにいったりするとあるみたいだよ」と答えてみたら「ふーん」って感じだ。
なにかのイベントに参加中とかなのかな?と思っていたら
しばらくしてまた唐突に「ねえ、ここに化石ってある?」
ここでようやくああ、これはいわゆる化石のことなんだな、と思って
「ここにはないなあ。化石、好き?」と言ったら「うん!!」と元気のいい返事が。
なるほどなー、私も大好きだったもんなー(今も変わってないけど)、と嬉しくなって
「お姉ちゃんも好きなんだー」と言ってみたりする。
(そして「お姉ちゃん」って言っちゃったけど…彼女からしたら「おばさん」なのでは…とあとからS嬢とひそひそ)

しばらくして、彼女の様子を穏やかに眺めていたお父さんに
連れられて部屋を出て行ったあの子は、また来てくれるだろうか。
来てくれるといいなあ。
そして勝手な話だけれど、ぜひあのまま、大きくなってほしいなあ。


この出来事で、「準備中」などという漢字は小学校2年生に成り立ての子には
なんの意味もなさないのだ、ということがわかった。
そりゃあそうだよね、まだちょっと難しい漢字だもの。
でもこのことって、すごく面白い。
彼女にとっては、この空間に入ってはいけないという情報はまったくなかったってことなのだ。